相川拓也「闘うことを恐れず、"俺らしさ"とともに」
2025/10/14
ラストシーズンを迎えた4年生のラグビー人生を振り返るラストメッセージ。
第3回は、相川拓也(4年/PR/桐蔭学園)です。
ラグビーを始めて以来、長くプロップとしてチームを支えてきた相川。
今年度はアタックリーダーとして、戦術面でも指揮する。
「プロップって“背中で見せる”タイプが多い。でも、自分はどこまでもクレバーに戦いたい。考えて、準備して、言葉でも引っ張れる選手でいたい。」
その言葉には、強豪での経験を通して培った芯の強さがにじむ。
「自分は曲げない。周りに流されず、プレーでも言葉でも、自分の色を出す。それが“俺らしさ”だと思っています。」
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桐蔭での挑戦
中学1年次に始めたラグビー。
日本大学第二中学校に入学し、勉強に励む毎日を送っていたが、先輩からの勧誘がきっかけでラグビーの世界に足を踏み入れた。
彼にとって、ラグビー人生の転機は高校進学だった。
当時花園を見たこともなかった相川は、当時所属していた練馬ラグビースクールの校長の薦めもあり、強豪校の実力も知らないまま桐蔭学園の門を叩いた。
ラグビー歴わずか3年、弱小校出身。強豪校で活躍するには基礎が不足していた。
しかし彼は、「基礎ができてなかった自分にとって、高水準の基礎を磨く桐蔭は合っていた」と振り返る。
寮生活が始まり、全国屈指の環境での日々が始まった。
高校時代の厳しい練習の日々をこう語る。
「桐蔭は“基礎”のレベルが本当に高い。技術もマインドも、全部の基準が全国トップクラス。自分のラグビーに対する考え方の“ベース”は、全部桐蔭で作られたと思います。」
挑戦の日々のなかで、相川は着実に力をつけていった。
高校3年次の選抜大会では、怪我を負った準決勝まで全試合で先発。
夏、秋シーズンも先発としてチームを背負った。
しかしラストシーズンの花園、準々決勝を前に相川は先発メンバーを外された。
準決勝の國學院栃木戦は出場0分。ベンチで引退試合を終えた。
桐蔭学園での挑戦は、選抜大会準優勝そして花園ベスト4という栄光の反面、相川は不完全燃焼で終える苦しさも残した。
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“闘い続ける”という生き方
今年はシーズン当初から先発メンバーとして出場を重ね、スクラムの最前線でチームを引っ張ってきた。
アタックリーダーとしても戦術面でチームを支える、その存在は今や欠かせない。
昨季まで不動の3番であった安部駿亮(24年度卒/現RH大阪所属)が卒業し、4年生になった今年。
相川は「今まで逃げてきたスクラムに向き合わなければいけない」と強い覚悟を決めた。
「頭で理解できていても体現が難しいのがスクラム。頭の中と実際のスクラムはかけ離れていました。ギャップを埋めるために、まずは伊藤コーチ、田中コーチにアドバイスを求め続けることから始めて。スクラムと本気で向き合うようになりました。」
自分に合う組み方を見つけるために、練習では1本1本違う組み方を試す。
試行錯誤の夏を超えて、ようやく形になってきた。
その成果を、対抗戦で発揮する覚悟を固めている。
卒業後は一般企業に入社する予定。
ラグビーを本気でプレーするのは、これがラストシーズンとなる。
就職活動の際、“闘える環境”を探すことをひとつの軸にしていたと話した。
「卒業後入社する企業は、若い頃から戦わないといけない環境で。それがスポーツに似ていて、考え方とかもラグビーや桐蔭学園に通じる部分があると思うんです。だから、そういう環境を自然と選んでいたのかもしれません。」
ラグビーを始めてから今日まで、彼は常に闘いの中に身を置いている。その場所こそが、彼にとって一番しっくりくる“居場所”なのだ。
“闘うこと”を恐れず、“仲間とともに挑むこと”を信じてきた。
その姿勢は、どんな舞台に立っても変わらない。
ラストシーズンに向けて、率直な想いを尋ねた。
「やっぱり1番は寂しさですね。毎朝、何十人で集合して同じ目標のために行動する。こんなことってもうなかなかないなと思ってて。社会人になるとその規模は3~4人程度の集団になる。それは寂しいです。」
そう言いながらも、彼の表情は穏やかだ。
「ラグビーを通して得たのは親友。一生付き合っていける仲間に出会えたことが一番の財産です。」
悔しさもあったラグビー人生。仲間と過ごした時間が支えになった。
最後に彼は、青学に残したいものを二つ挙げた。
一つは、自分の存在。
いいことも悪いことも含め、この部で過ごした時間を糧にしてきた。
上下のつながりを何より大切にしてきたからこそ、卒業しても誰かの記憶に残り、久しぶりに顔を出したときには笑って話せるような存在でありたいという。
もう一つは、それぞれの個性だ。
青学は仲の良さが強みである一方、ラグビーの場では一つの意見にまとまりすぎることもある。
「みんないいキャラや考え方を持っている。それをもっと出して、わがままにぶつかり合えるチームになってほしい」と語る。
個々の個性を尊重しながら、同じ目標に向かって進むチームであってほしい。
そう願う気持ちが言葉に滲んだ。
その姿勢は、同期や後輩にも自然と伝わっている。
彼が残すものは、プレーだけではない。
青学に息づく“つながりの強さ”そのものだ。
ラストシーズンは、グラウンドでもグラウンド外でも“彼らしさ”を体現し、チームの目標である大学選手権ベスト8へ。
その先にどんな景色が待っていようと、彼はきっと変わらず前を向いている。
インタビュアー:利守 晴(2年)
ライター:内山 りさ(2年)