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越智柊太「新しい文化をつくった内部生。常に忘れない“きっかけ”」

2025/10/24

ラストシーズンを迎えた4年生のラグビー人生を振り返るラストメッセージ。
第6回は、越智柊太(4年/FL/青山学院)です。


 

 

 

いつも彼が試合で活躍すると、必ずチームメイトから「越智くん!」と大きな歓声が上がる。

仲間に愛され、信頼されているのが伝わる光景だ。


 「大学に入ってからはずっと下のチームだったけど、どんなに惨めに思えても、全力でプレーすることをブレずに続けてきました。人の目よりも、自分の想いやきっかけを優先してきたからこそ、ここまで粘り強くやれたんだと思います。」


それは、彼の努力と人柄が信頼を勝ち取ってきたという、何よりの証だった。



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ラグビーとの出会い

内部進学で青学に入学した越智。
中等部時代は野球部に所属していた。

中等部時代から交友のあった堀江(4年 堀江歩)から誘われ、高等部入学を機に、初心者からラグビーの世界に足を踏み入れた。

部員数が少ない、いわば弱小チームだった高等部ラグビー部。
入部当初、同期は堀江と越智の2人のみだった。

高校3年次の秋大会では明治学院大東村山高校に敗れ、初戦敗退。



大学と高等部とのレベルは、附属校とは言えど、決して近いものではなく、内部生のうち選手は毎年2人ほどしか大学ラグビー部に入部していない。


そんな中でなぜ、彼は入部を決心できたのか。

それは彼が"きっかけ”を何よりも大切にしながら歩んでいるからだった。


「僕は何かを始める“きっかけ”を大事にしたいタイプで、もちろん続けていくうちに迷うこともあるけど、出会いや想いは軽く扱いたくない。ラグビーもそう。始めたときの気持ちをずっと大切にしてきました。
高等部から上がった同期の堀江と関藤(4年 関藤南)に強く誘われたのもあり、始めた時の気持ちを思い出して、自分もここで頑張りたいと思いました。」


しかしいざ入部して、練習の精度や強度も、高等部時代とはまったく異なると、改めて痛感した。

そこで自身の強みをつくるために、まずは体づくりに励んだ。

「ラグビーのスキルは、ずっとラグビーを高いレベルでやってきた仲間たちには敵わないと思ったけど、ウエイトだけは他の仲間とスタートラインが同じようで。自信を持てるようになろう、強みにしようと下級生の時から取り組んでいました。」

入学から現在まで体重は約15キロ増。スクワットも140キロから、200キロまで伸びた。

 


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チームウエイトという新しい文化


積み重ねた努力は、やがてチーム全体の変化へとつながっていった。

彼は現在、ウエイトリーダーを担い、チームのトレーニングを牽引している。

「僕が下級生の頃は、チーム全体でウエイトに取り組む文化がなかったんです。それぞれが個人でやる形で、トレーニングの効果に大きなムラがありました。」


チームを強くするために、まずは環境を変えることが必要だと感じ、特にリーダーを任された今年は、制度づくりにも力を入れた。

限られたスペースと時間の中で、どうすれば全員が集中してトレーニングできるのか。
練習や授業で疲れ切った仲間たちが、少しでも効率よく取り組めるように。

この一年、常に選手とコーチの架け橋になりながら、精度の高いウエイトトレーニングを行える環境を整えた。

小さな工夫の積み重ねが、チーム全体の意識を変えていった。


「“チームウエイト”という文化が定着したのは、ほんの小さなことかもしれないけど、
誰かが動かないと始まらなかったことだと思います。
自分がきっかけになれたならうれしいし、来年以降も続いていってほしいです。」


新しい文化が、今ではチームの当たり前になった。

その変化の中心にいたのは、誰よりも地道に汗を流してきた内部生だった。
 



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ラストシーズンへ

大学生活も最終章。
ラストシーズンを迎え、これまでを振り返った。

「今まで、試合に出られなかったり、上手くいかないことの方が多かったけど、自信を持てる分野を作って、ラグビーに対してポジティブに取り組むようにしてきました。
特にウエイトを誰よりも努力したことで、自分を信じることができたんだと思ってます。」


自分の居場所を、自分の手で作ってきた4年間。

内部生という立場で挑み続けたこの時間は、彼にとって大きな財産となった。

青学では、強豪校出身でなくても、覚悟と想いがあればチャレンジし続けることができると、自身が身をもって実感したという。



 ひたむきに努力し続け、常に初心を忘れなかった越智。

 そのマインドこそ、彼の謙虚さの根底にあると感じさせられた。

その姿勢は、後輩たちの挑戦へと確かに受け継がれていくだろう。

 



インタビュアー:利守 晴(2年)
ライター:内山 りさ(2年)