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勝田惟吹「どんな立場でも。積み重ねが、組織を強くする。」

2025/10/29

ラストシーズンを迎えた4年生のラグビー人生を振り返るラストメッセージ。
第7回は、勝田惟吹(4年/SO,CTB/桐蔭学園中等教育)です。

 

浪人を経て辿り着いた青学。
勝田は、一般入試で入学し、ラグビーを続けることを選んだ。  

周りは高校時代から花園を経験した選手ばかりで、一般組の彼にとって、毎日が刺激的だったが、同時に消極的にもなった。


「ミスをしないようにっていうのが、ずっと頭の中にありました。」

練習では、とにかく周囲のスピードと判断に置いていかれないように。
考える余裕などない。ミスに恐れたことで、消極的なプレーに繋がった。

 

 

そんな1年目の夏合宿で、転機となった試合がある。
学習院大との定期戦。初めて80分間のフル出場を果たした。

「先輩に助けられながらも、自分でも試合に参加できたという実感がありました。
それまで練習ではどうしてもチャレンジできなかったけど、その試合では前向きにプレーできた気がします。」

 



その試合を終えたあと、気持ちの面でも少しずつ積極的になれた。


しかし、シーズン終盤に前十字靭帯を断裂。
2年目はリハビリと体づくりに専念する1年となり、プレーできない時間が長くなった。


当時はただ、自分ができることをやるしかなかった。



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組織の中で、何ができるか

復帰後の3年目。

同じポジションだったことで距離が近かった、1つ先輩の河村(24年度卒 河村凌馬)が主将になった。

消極的になりやすかったそれまでとは異なり、「4年生のために」と目標達成を目指すようになったという。



Aチームではなかなかプレーできなかったが、オープン戦ではキックを強みに活躍する場面が多くあった。

理工学部の授業との両立に苦労しながらも、自身の中で責任を感じていたキックは特に、自主練習を重ねた。


その積み重ねが、自分の中でチームへの貢献の形になったという。
Aチームでなくても、チーム全体の力を上げることはできる。


「入れ替わりが激しい青学の中で、ボトムアップの重要性を伝えたいです。」
それが、いま彼が感じている“やり切る”という意味だ。



昨年、部の雰囲気が大きく変化し、結果を残した青学。
彼も、その移り変わりを渦中で体験した。


「1、2年生のときのチームは上が全部つくりあげる感じが強かったけど、上級生になってからの青学は、スコッドに関わらず全員が努力しないといけないし、ボトムアップの重要性も問われて。そのおかげで、役割が明確になりました。」



最高学年として迎えた今年、彼は後輩とのコミュニケーションにも力を入れた。

「去年は選手権に行けた分、今年はベスト8を絶対に達成したいという気持ちが強くて。
その中で、最高学年として後輩との関わりを増やせたのは良かったと思います。自分は上でプレーしていなかったけど、同じように悔しい思いをしている選手へのアプローチは意識していました。」




目立つ立場ではなかったが、ひたむきに、目の前の練習に取り組み、周囲を気にかけた。
その姿勢が、チームの一部を確かに支えていた。




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もっとできた、だからこそ伝えたいこと



同期のバックスは、勝田を含め6人。
最高学年になったが、そのうちAチームに定着しているのは1人。


「同期のバックスでAチームにいるのが純岳(4年 小林純岳)だけで。でも、最後はバックスの4年生がチームを引っ張っていきたいと思っています」


対抗戦で活躍するフォワードの同期と、バックスの後輩。
その姿を見ながら、“4年生がバックスを引っ張ってきた”と言い切れない悔しさが滲んだ。
 


このシーズンを最後に、ラグビーから離れる勝田。
だからこそ、自分自身が“やり切った”と思えるようにプレーしたい。


「自分の弱みにもっと向き合えば良かったです。」


自分よりも優れているプレイヤーに打ち勝つため、自分の強みを伸ばそうと積み重ねてきたこの4年間。
しかしそれは同時に、自分自身の弱みから目を逸らすことにもなった。



強みを磨くだけでは、対抗戦という高いレベルでは通用しない。
課題に正面から向き合うことが、本当の意味での“準備”になると痛感した。

 「青学は、バックグラウンド関係なくチャンスが与えられるチーム。一般で入った自分でも、本気でやるかやらないかで道は変わったと思います。」


どんな場所からでも、組織に貢献できる。 
4年間でそれを見た彼は、静かに言葉を続けた。


「自分がいたこのチームは、確かに強くなっていると思います。」






気が付けば、チームも自分も変化していた。
その変化を自覚できたことが、4年間の何よりの成果だったという。



だからこそ、次の世代には伝えたい。


どんな場所にいても、自分にできることは必ずある。
その積み重ねが、チームを強くする。
 

 

 






インタビュアー:利守 晴(2年)
ライター:内山 りさ(2年)