幸内良真「試される人間力。“考えるチーム”を未来へ。」
2025/10/30
ラストシーズンを迎えた4年生のラグビー人生を振り返るラストメッセージ。
第8回は、幸内良真(4年/SO,FB/目黒学院)です。
「ラグビーは、人間力のスポーツ。」
幸内は、まっすぐ、こう語った。
どれだけ上手くても、信頼されない選手は試合に出ることができない。
グラウンドの上で彼が信じてきたのは、技術よりもはるかに、人としての在り方だった。
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親元を離れた高校時代
小学2年生から続いたラグビー人生。
彼の最初の転機は、高校入学だった。
新潟にある親元を離れ、目黒学院で3年間を過ごした経験が、今の自分をつくったと振り返る。
「寮に入って、初めて自分のことを全部自分でやるようになって。家族のありがたさも、人との関わり方も学びました。」
周囲から“冷静に俯瞰している”と評されるその性格。
その原点は、まさにこの高校時代にあると考えさせられた。
「ラグビーって、人間力が高くないとできない。」
この考えは、高校時代に監督からよく言われてきた。
「気づく力や気遣いがある人は、グラウンドでも“攻めるべき時”“守るべき時”を自然と判断できる。そういう人間力をどれだけ高く持てるかが、フィールドの内外を問わず求められると思います。」
プレーの上手さよりも“どう在るか”。
彼がラグビーで得たのは技術以上に、人としての礼節、周囲を見る目、そして自分を律する力だった。
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逃げてもいい。でも、向き合う勇気を
ラグビー中心だったそれまでの人生。
高校生ながら、将来に不安を感じた。
卒業後の進路を見据え、青学を選んだ。
“ラグビー界に爪痕を残したい”などではない、
ラグビー以外を見据えた志望理由だったからこそ、熱が入りづらかったと振り返る。
「正直、スイッチが入ったのは4年生になってからでした。それまではあんまり。
“あと1年でラグビー終わるのか”と思うと、絶対に後悔だけはしたくないって思いました。」
彼にとって“悔いのない終わり”とは、自分の中でやり切ったと思えるかどうか。
2年次の対抗戦 早稲田大戦。悔しい記憶が蘇る。
22番を背負い、後半30分にフルバックとして出場した。
幸内のもとに蹴られたボール。
その処理に焦っている間に、相手にトライをとられた。
この試合がきっかけで、リザーブとして試合に出場すること自体に苦手意識を抱いていた。
悔しさを経て、少しずつ臆病だった自分を受け入れ、向き合ってきた。
弱みを知った彼が、後輩に伝えたいこととは。
「怖かったり、やらかしたりしたとき、そのときは逃げてもいいよって伝えたい。でも、そのままじゃダメだよってことも。自分にとって大事な失敗をしたときは、少し時間を置いてでも、ちゃんと向き合ってほしいです。」
人それぞれ、強みも弱みもある。
そこにどう向き合っていくか、それも人それぞれでいい。
ただ、その時間を蔑ろにしてはいけない。
弱さを知ったからこそ、彼の言葉には優しさと説得力がある。
“臆病だった自分”と向き合うことが、彼を強くした。
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“考えるチーム”を未来へ
最終学年としての1年、幸内がこだわってきたのは“選手が考える文化”。
「去年との違いは、選手が自分たちで発信していること。各リーダーが意見を持って、コーチ陣にもチームにも、アプローチできるようになりました。それが実際に形になったのは、考える力があったからだと思います。」
今年度は戦術、規律、フィジカル等、各分野においてリーダーを作り、自発的に行動できる組織になった。
来年以降の青学にも、その姿勢を残したい。
「考えることをやめないチームであってほしいです。」
単に指示されたことを“こなす”のではなく、
“なぜそれを言われているのか”“どうすればもっと良くなるのか”を一人ひとりが考える。
その積み重ねが、チーム全体の成長を促す。
リハビリで練習を離れた時も、リハビリメニューの合間には必ずグラウンドに目を向け、
仲間へのフィードバックを欠かさなかった幸内。
チームのために考え、伝えることをやめない。
冷静沈着。でも、チーム想いで温かい。
そんな彼に、感謝を届けたい人を尋ねると、迷わず答えた。
「いちばん伝えたいのは、家族と同期です。
家族には、小2からずっとラグビーを続けさせてもらって、感謝してるし、
最後はグラウンドで体を張っている姿や、仲間と喜び合っている姿を見せて、喜んでもらえたらうれしいです。」
「同期とも、4年間同じ時間を過ごしてきた仲間として、最後まで同じ想いを共有したい。
きっと、そういう瞬間をいつまでも思い出すかなって思います。」
ラグビーは人を映す。
その中で、彼は“考える”ことで、自分を磨いてきた。
最後は、その文化をチームに託す。
インタビュアー:利守 晴(2年)
ライター:内山 りさ(2年)


