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堀江歩「“歩みを止めない。”愚直という強さ。」

2025/11/12

ラストシーズンを迎えた4年生のラグビー人生を振り返るラストメッセージ。
第13回は、堀江歩(4年/WTB/青山学院)です。


 



笑われても、報われなくても、
それでも前に進む。

自分は決して上手くない。だからこそ、成長を諦めることだけはしない。
愚直に、真っすぐに。引退の瞬間までその姿勢を貫く。


両親に名づけられたように、“歩み”を大切に。
その歩みの一つひとつに、これまでの積み重ねと、ラストシーズンに懸ける覚悟が宿っていた。






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小さなチームで見つけた「覚悟」の原点


幼稚園の頃、父の影響で西宮ラグビー少年団へ。
スクールでは、後に青学で再会する内藤(4年 内藤基)とも出会った。

小学校を卒業する頃、内藤は強豪チームの道へ。
堀江は父の転勤で東京へ移り、青山学院中等部に進学した。




その後は、高等部に進学。

部員が少ないチームで、チーム全体でみれば、15人に達するのがやっと。
“けが人が出れば、試合は棄権になるかもしれない”という不安と常に隣り合わせだった。




高校3年次、彼は自らキャプテンを名乗り出た。

平日のグラウンド練習やトレーニングにコーチは不在。
弱小チームとしてモチベーションが保てない後輩を束ねる。
メニューを組み、時間の管理とともに、練習を進めていく。


どれをとっても、高校3年生にとっては相当な重責だったのは一目瞭然だ。


「“自分がもっとチームを引っ張らなきゃ”と思う一方で、仲間にどう伝えればいいかわからなかった。」

口数が少ない彼にとって、言葉で示すのは簡単ではない。
だからこそ、自分の行動で示すことを選んだ。

誰よりも早く動き、誰よりも真面目に練習に取り組む。
チームに欠けていた規律からも目を逸らさず、時には後輩に厳しく接することもあった。

これほど真面目で愚直なキャプテン。
“歩くんのラストシーズンのために頑張ろう”と、その背中に憧れた後輩は少なくない。






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成長を積み重ねて


大学に入学してからの堀江にとって、最初の壁は高等部との圧倒的なレベルの差だった。
自分のプレーでチームに迷惑をかけるのが何より辛く、「ラグビーを続けるべきか」と悩む日々が続いたという。




そんな中、1年生の春、成蹊大学のC戦で後半ラスト20分だけ出場する機会が訪れた。

「この20分で、思い切ってチャレンジする。」


そう意気込んで臨んだ20分間、結果は1トライ。
たかがC戦の1トライかもしれない。

だが、彼にとっては大きな意味を持った。
「弱気な自分から少しだけ抜け出せた気がした。」

小さな1歩だったが、たしかに前に進み出した瞬間であった。




しかしその後は怪我が絶えず、1年を通して思い通りにプレーできることはなかった。
調子が上向いたときに再び離脱を余儀なくされることもあったが、もどかしさだけが積み重なったわけではない。




4年春、立正大学とのオープン戦で足を骨折。
松葉杖での生活を余儀なくされ、グラウンドに立てない日々が続いた。

「サボろうと思えばいくらでもできたけど、ここで諦めたら自分を裏切ることになる。」



弱みと向き合い、できることに徹した。
復帰後、積み重ねてきた努力が、確かな自信となって表れた。




 




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愚直に、真っすぐに。“歩み”を止めない


どれだけ周囲との差を感じても、歩みを止めたことはなかった。
そしてこれからも、引退の瞬間まで成長を諦めるつもりはない。



「どれだけ愚直に、真面目に、馬鹿になれるか。」

堀江が大切にしているのは、その姿勢だ。
周りと比べず、恥じずに努力を積み重ねる。
そんな人が一人でも増えたとき、チームの力は最大化する。




傍から見れば、笑われるかもしれない。
どれだけ真面目にやっても、上で試合に出られる可能性は低いかもしれない。
“やっても意味がない”と思われてもおかしくない。


それでも、彼は自分の在り方を体現するために、行動で示すことを選んだ。
自分にベクトルを向け、弱さと向き合い、できることを積み重ねる。

そんな姿を貫くことが、彼の信念であり、ラストシーズンの覚悟だ。

「どんな状況でも、愚直に。カッコ悪くても、やり切ったと胸を張って言える自分でいたいです。」 



結果がどうであれ、最後まで、ひたむきに。
この一心でラストシーズンに挑んでいる。







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“過程”を信じて


「挑戦できる環境は整っている。だからこそ、挑戦してほしいです。」
彼が、大学でラグビーを続けようか迷う人に一番伝えたい想いだ。


試合に出られないからといって、ラグビー部にいる意味がなくなるわけではない。
彼自身、4年間の中で何度も壁にぶつかり、もがきながらも挑戦を続けてきた。

その過程で得たものの大きさは、勝敗や出場機会では測れない。




「挑戦を通してしか得られないものがあるし、挑戦し続けたこと自体に意味があると思う。この経験の価値を、次に挑む誰かにも味わってほしいです。」


その言葉には、堀江自身が体現してきた挑戦の重みと、後に続く者への揺るがぬメッセージが込められていた。





インタビュアー:利守 晴(2年)
ライター:内山 りさ(2年)・利守 晴(2年)