森草知「折れない理由。怪我に苦しみながら貫いた“前向き”。」
2025/11/18
ラストシーズンを迎えた4年生のラグビー人生を振り返るラストメッセージ。
第15回は、森草知(4年/CTB,WTB/桐蔭学園)です。
森がラグビーを始めたのは小学1年生。
5歳上の兄が通うラグビースクールの送り迎えがきっかけだった。
中学1年次に一度ラグビーからは離れた。
他の競技にも挑戦してみたいという好奇心からだった。
しかし一度距離を置いたことで分かった。
“自分はラグビーが好きだ。”
1年後、中学2年次に再びグラウンドに戻った。
地元 岐阜県で育った森。
高校進学時に“ラグビーを通して、県外で挑戦してみたい”と志した。
「このままでいいのかなって思って。人と同じ道を進みたくなかったから、地元の中学から高校もそのまま、大学もっていうのが嫌で。」
そして彼は、桐蔭学園へと進んだ。
この高校時代は彼にとって大きな転機になった。
厳しい環境、そして部員数の多さ。
全国屈指の強豪で、メンバー入りできるのはほんの一握り。
彼はなかなか思うように結果を出せず、苦しんだ。
高校2年次の夏。
コロナ禍で部活がなくなり地元に帰った3か月間で、彼は体づくりに集中した。
3か月で体重を20キロ増量し、90キロに。
その努力はチームの評価に繋がり、上のスコッドに昇格した。
「部活が再開した時に周りにすごく驚かれました。コロナ禍に感謝ですね。」
と笑って振り返った。
しかし、桐蔭学園で過ごした3年間。
ラグビーに真剣に向き合ったからこそ、初めて“自分のメンタルが壊れる感覚”も味わった。
自身をパフォーマンスが安定している選手ではないと自負する森。
彼にとってスコッドの入れ替えは、苦しかった。
「高校がいちばんキツかった。肉体というより、メンタル的に。うまいメンバーのプレーを見て、めちゃくちゃ落ち込むことが多かったです。」
うまくいかないと、自分を追い込んだ。
その積み重ねが苦しくて、森はそこで“ひとつの考え方”を身につけた。
「あまり期待しない方が楽だ。」
それは逃げではなく、前に進むための術。
この心の持ち方は、のちの青学での“心の土台”となる。
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試練に折れない自分
青学に進学した森。
1年次から対抗戦のメンバーに絡んだ。
自分のプレーは波が大きい。
調子が良い日もあれば、悪い日もある。
だからこそ、期待しすぎず、力みすぎないようにした。
「メンバーに入っても入らなくても、そんなに気負わないようにしてます。
でも、上のチームがいい試合をしているのを見ると、素直に喜べない時もあります。自分も出たいので。」
3年次からシーズン中の怪我が続き、チームの離脱とスコッドの行き来を繰り返した。
復帰をして活躍したかと思えば、怪我をし、また離脱。
そんな不安定な状況に悔しさが募るのは当然だった。
それでも、ラグビーへの気持ちが途切れることは一度もなかった。
「メンバーから外れて、練習やトレーニングに真剣に向き合わないのはダサいなって思って。向き合いたいって意味でも、あまり気にしないように。悔しかったけど、腐っても仕方ないし。チームメイトに声をかけるようなタイプじゃなかったけど、自分が真面目に取り組み続けようとは思ってました。」
確かにチームを支えた存在。
青学が変革期を迎えた中で、彼のように地道に向き合い続ける選手の存在は、間違いなく大きかった。
印象に残った試合を訪ねると、1年次のジュニア戦 拓殖大戦と、今年度の春季大会 慶應義塾大戦を挙げた。
「ジュニア戦の時は、接戦だったけど勝てたし、活躍して観戦メンバーも盛り上がってくれたのが楽しかった思い出。春の慶應戦は、その場にいた全員の一体感があって、興奮しました。」
悔しかった経験も多いはずだが、振り返ると“楽しい試合”の話が自然と口から出てくる。
その言葉からも、彼がラグビーを前向きに続けてこられた理由が垣間見えた。
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ラストシーズンに込める言葉
やはり、彼の大学ラグビーを語る上で欠かせないのは、怪我との闘い。
それでも心が折れなかった理由は、家族の存在だったと語る。
「怪我するたびに地元から来て、飯作ってくれて。すごくサポートしてくれました。本当に感謝しかないです。」
離れて暮らしながら、支えてくれた両親。
最後まで走りきることが、きっと家族への恩返しになる。
卒業後は一般企業に就職し、ラグビーを手放す。
彼らしい言葉には、寂しさよりも明るい覚悟が示されていた。
「試合ではいつも遠慮しちゃうので。最後くらいはわがままに暴れたいです。」
努力して、怪我と向き合い、仲間と笑い合い、競争の中で精神も強くなった4年間。
チームに残したいものを尋ねると、彼は迷わず答えた。
「青学の“仲の良さ”ですね。人がいいので、これからもこの雰囲気が続くといいなと思います。」
その表情は、この4年間の充実を物語っていた。
爽やかで、前向きで、あたたかい。
森のラストシーズンは、そんな笑顔で締めくくられようとしている。
インタビュアー・ライター:内山 りさ(2年)


